電力自由化に見劣りする参入企業数の少なさ
ガス自由化は、電力に続いて実施されますが、課題はまだまだあります。
まず、電力会社は既存10社であったのに対し、都市ガス会社は大小含めると200社以上あるのが現状です。
東京ガス、東邦ガス、大阪ガス、西部ガスの4大ガス会社7割を占めていますが、これ以外の中小規模のガス会社がガス自由化に対応し、競争下で戦える体力があるかが懸念されています。
また、ガスはガス漏れなど重大な事故に発展するリスクが高いため、保安責任が生じたり、電力に比べて調達方法が困難なことから参入障壁が高く、実際に2017年1月時点での参入企業は10社に留まっているのが現状です。
電力自由化の際は100社以上の新電力が集まったのと比較するとガス自由化は非常に少なく市場活性化に課題が残っています。
ガス導管やメーターの定期点検や緊急保安の責任は自由化後も既存の都市ガス会社が引き受けることになっています。
今後のシェアを左右する二重導管規制緩和という課題
ガス自由化で、既存ガス会社とシェア拡大を図りたい電力会社などの新規参入企業の間で最も議論に上がったのが二重導管規制の課題です。
二重導管規制とは、既存のガス導管がある場合は後からガス導管を敷くことを規制する制度です。
今あるガス導管を使用せず新たに同じエリアに導管を敷くことは余分な設備投資を伴い、結果としてガス料金の値上げに影響することを防ぐために設置されました。
では、なぜ電力会社は二重導管規制の緩和を希望しているかというと、電力会社が保有するガスの性質に起因します。
電力会社が電気を作り出す際に用いるLNG(液化天然ガス)は、LPG無添加や希釈を行わない熱量未調整ガスのため、そのまま既存のガス導管では利用できません。
しかし、ガス会社が製造する都市ガスは熱量調整を必須となっており成分が異なります。
このため、電力会社は既存のガス導管でガスを提供するにはLPGの添加を行ったり、調製施設を設けたりする必要が生じてしまい、発電用のガスをそのまま利用できるよう二重導管規制の緩和を要求してました。
議論の末、経済産業省・エネルギー庁は二重導管規制を緩和することを発表し、一定の割合以下の販売量「3年4.5%」を上限値として二重導管敷設を許可するに至っています。
託送料金で直面するパンケーキ問題
電力自由化でも問題となった託送料金という課題。
ガスの場合、ガス事業者が既存ガス会社の導管を借りてガスを利用者に届ける託送供給にかかる費用のことを言います。
託送供給とは、託送供給依頼者のガスを既存ガス会社の導管で受け入れると同時に、受け入れた場所以外の地点で受け入れた量と同じ量のガスを、導管から利用者に供給することです。
ガス導管の設備を持たない新規参入業者は、ガス導管を持つ企業にお金を支払って利用者に届けてもらうわけですが、ガス導管の利用料はガス料金に上乗せされる形で消費者が負担することになるため託送料金の圧縮が課題となっています。
そのため、政府は公正な託送料金の設定が必要であると考え、大手都市ガス会社である東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・西部ガス・東部ガスに対し、託送料金を定めた「託送供給約款」の認可申請内容を修正するよう指示し、従来の託送料金よりも割安にすることを要求しました。
現時点では、複数の事業者が持つガス導管を経由して供給を行うと託送料金が積み上がっていくため、パンを重ねていくことに例えて「パンケーキ問題」と言われています。
これを解消させるために、国は託送料金を利用者全体で負担する一般負担化させることでパンケーキ問題の解消を目指していますので今後の動向に注目です。